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「WALL-E」と深める知的探求と人生

菅野 璃海

第一章 はじめに 第二章 物語の設定とあらすじ 第三章 少年と社会人では変化している物語 第四章 ロマンの物語 第五章 地球環境へのメッセージ 第六章 情報システムとしてのAXIOM 第七章 人類の尊厳 第八章 法律の視点から見た物語 第九章 対立構造 第十章 おわりに
第一章
はじめに
あなたはDisney Pixar(2008)の映画、『WALL-E』を見たことがありますか? 全く見たことが無かったとしても、四角いロボットと白いロボットが出てくる...それくらいの印象はあるかもしれません。 あらかじめ申し上げますと、もし『WALL-E』を視聴されたことが無い方は、本稿をご覧いただく前に一度視聴されることを強くお勧めいたします。 本稿執筆時点の2026年現在、Amazon PrimeでのレンタルとDisney+で視聴できることを確認しております。 さて、本作品は私が小学生に上がったばかりの頃に日本で上映開始され、私自身は劇場で観る事は叶わなかったもののロマン溢れる映画ポスターやテレビ広告のかっこよさが非常に印象に残っていました。 当時、乗り物や機械、宇宙に対してとても強く興味を持っていた私は、映画公開から二年経った小学三年生の頃にDVDレンタルショップでこの作品をレンタルする事ができ、ここで初めて視聴する事が叶いました。 私の人生は、この日初めて『WALL-E』を見終わったことによってひとつの転機を迎えていたように感じます。 なぜなら初めて視聴した時の衝撃から、数多のメッセージを秘めた本作品は私を虜にし、8歳から23歳の今現在まで一度も本作品を視聴しなかった年は存在しないからです。 本作品は間違いなく、私の人生とその人生観に"根ざしている"と言っても差し支えがないでしょう。 本稿では、『WALL-E』という作品について、映画としての面白さだけでなく、私が幼少期からこれまでに数百回視聴してきた結果得られた、多角的な"視点"を皆様にお届けできればと思います。 尚、映画以外からしか取得できない「WALL-E」の設定に関する情報はDisneyが提供しているものであったとしても、または系列作品のものであったとしても使用しない事にいたします。 それでは、私の見る「WALL-E」の世界を存分にお楽しみください。

第二章
物語の設定とあらすじ
本章以降、引用と、根拠として挙げた者の本編中からはわかりにい箇所、または本論に直接関係のない考察は全て章末に脚注としてまとめる事といたします。 非常に乾いた筆で設定とあらすじを述べますが、実際にはもっと色づいた作品です。 尚、ここからの章は全て、これまでに一度は「WALL-E」を視聴した事がある読者を想定しています。 本章では舞台設定、登場人物、あらすじの順で物語そのものについてを展開していきます。 舞台設定 地球と宇宙艦(AXIOM)が主な舞台で、年代設定は遠未来、地球は次に示すような悲惨な状態として描写されています。 それは、大量のゴミが大地に溢れ、人間を含むほぼ全ての動植物が消滅していて、海は干上がって粘性の黒い液体のみが残り、宇宙から見える地球は茶褐色で人工衛星に覆われているという、非常に歪な姿です。 地球ではそのような深刻な汚染により人間が持続的に住む事が困難となったため、人類は地球を離脱して宇宙に拠点を移しました。この拠点が宇宙艦AXIOMで、5年間の宇宙旅行という名目で地球を出発したものの、地球環境の改善が見込めなかったためにおよそ700年にわたって航行を続けています。(AXIOMは複数ある事を作中で示唆されていますが単一の存在として扱います) [*1] AXIOMの中で人類はロボットによって「生かされている」状態として描写されています。身の回りの世話から物の運搬、必要な器具まで専用の自律ロボットにより全自動で行われ、移動すらもホバーチェア(=多機能な浮いている椅子)によって不要になっているという状態です。そのため本作で生存する人類は全て自立できないレベルの肥満体型となっており、環境から人間の姿まで私たちが生きる現代世界とは大きく異なる設定となっています。 登場人物 地球の登場人物 登場人物というよりほとんど登場ロボットですが、本稿で必要となる代表的なものに触れていきます。 この地球環境で稼働するのが「WALL-E」そして、作中の地球上で確認できる唯一の生物に知能を持つ「ゴキブリ」が挙げられます。[*2] 「WALL-E」は地球上に溢れたゴミを片付けるロボットとして描かれています。名前は「Waste Allocation Load Lifter: Earth-class」のイニシャルです。 [*3] 「WALL-E」は大量生産された量産型のゴミ処理ロボットの総称ですが、作中では動作している個体としてはたった一台のみしか登場せず、他のWALL-Eは全て故障または損壊して機能停止している描写があります。[*4]なので、作中での「WALL-E」は総称ではなく、この一台に向けた固有名詞として扱われています。この「WALL-E」は知性を持ち、ゴミ処理の課程で好奇心の的になった物を収集したり、VHSよりも小さいビデオテープ(8mmビデオ)を再生してダンスや恋を理解したりしています。加えてかつては「WALL-E」たちを輸送する用途だった車両を自身のベースメントとして改造しLEDや収集品を用いてデコレーションしています。[*5] ※本稿も作中の表現に倣い、この知性ある「WALL-E」を単一の存在「WALL-E」と呼ぶことにします。 AXIOMの登場人物 AXIOM側はかなり多いので、便宜上の三つの分類と、その中の各個人については本稿にとって重要なもののみを取り上げます。 分類は「人類」、「艦橋系ロボット」、「艦橋系以外のロボット」から構成されていて、対立構成は「艦橋系ロボット」VS「人類」&「艦橋系以外のロボット」です。 ロボットの分類は単純に目の色と機能で分けています。艦橋系のロボットは赤、それ以外のロボットは青という違いです。 まずは人間の、艦長、ジョン、メアリー。艦長は地球探査の映像から地球が環境的課題を抱える事を認識し、地球へ戻る事を決意実行する重要な役割を担います。作中で艦長の呼称は「Captain B. McCrea」である事が明示されますが、本稿では「艦長」と呼ぶことにします。[*6] ジョンとメアリーはそれぞれ「WALL-E」に干渉されロボットの完全支配から若干程度脱した存在として描かれ、最終的に恋愛関係になることが描写されます。 続いて艦橋系ロボットの「AUTO」、「GO-4」、「SECURE-T」で、「AUTO」は艦橋に固定されたAIハンドルのオートパイロットで、指令に従って冷酷に植物を廃棄処理しようと人類に立ちはだかります。「GO-4」は「AUTO」直轄で警備を統括する現場を担当する艦橋系ロボットで、警察ロボット「SECURE-T」を指揮する事ができ、自身の内側に収納機能を持ちます。「SECURE-T」は普段は"スチュワード"キオスク端末として存在していますが異常時または「GO-4」及び「AUTO」の指示に応じて警察として出動します。「SECURE-T」は赤や青の目を持ちませんが、物理的な接触を介さずに物を持ち運ぶことができるトラクタービームが「GO-4」と同じく赤色であり、「GO-4」の指揮下で動くことができる事から艦橋系ロボットと定義しています。 最後に艦橋系以外のロボットです。 帰還した探査機を水際で清掃し、且つ作中では艦内を清潔に保つ役割を遂行していた掃除ロボット「M・O」、マッサージ用ロボット「HAN-S」、惑星探査用ロボット「EVE」が代表ですが、これらは関わるロボットのうちほんの一握りとなります。概要は「EVE」以外は簡単に記載します。 「M・O」は船外からの汚染物質を清掃する役目を持ち、船外の汚染物質にまみれた「WALL-E」と彼の足跡を清掃します。結果として「WALL-E」及び「EVE」がエアロックから艦外に投げ出されそうになった際にそれを防ぐ役割を果たしました。「HAN-S」はマッサージロボットですが、登場した個体は腕の回転が制御できなくなり破壊行動を起こしてしまうエラーがありました。しかしそれを利用して「WALL-E」一行に立ちはだかる大量の「SECURE-T」を破壊する事で艦橋系への反逆に一役買っています。 最後に「EVE」です。「EVE」は惑星探査専用のロボットで、白くて丸いフォルムにスキャナーや録画機能、収納機能を持ちます。また、重力下にて燃焼を使わずに音速を超えて飛行する事ができ[*7]、右手に超高火力のレーザー銃を搭載しています。この作品で使用される武器の中で最も強いものと言えるでしょう。 このうち、武器を持つのは「AUTO」と「EVE」のみで、「AUTO」は機能の一つに電撃を継続的に与える事ができるスタンロッドが組み込まれています。 本編あらすじ この作品は、「汚染された地球から目を背けて宇宙に留まっていた人類が、再び地球を住環境とすべく帰還する」というのが大筋です。 汚染された地球で「WALL-E (=以下、彼またはWALL-E)」はゴミの処理に従事していましたが、地球探査のために訪れた「EVE」を発見し興味から付きまといます。 はじめ「EVE」から見た彼は正体不明の脅威だったため銃撃しましたが、ただ付きまとってくるだけのロボットである事を認識し、それ以降は存在を認めつつも特に彼に対してアクションを起こしませんでした。探査を継続していた「EVE」は探査対象が発見できない事に怒りを募らせていましたが、そんな中放置された貨物船のリフマグ(=鋼材や鉄を磁力によって持ち上げるクレーン設備)に張り付いてしまいました。強力な磁性体であるEVEは身動きが取れず、最終的にはリフマグの磁石部分をレーザー銃で吹き飛ばして体を自由にした後、リフマグが搭載されていた船に4発の銃撃を加えて計五隻の貨物船を破壊してしまいました。 彼はそれを見つつ「EVE」に近づきますが、それに気づいた「EVE」はついに彼に命令(directive=機械として与えられている役割)を聞き、加えて互いの名前を交換しました。 その直後、彼は度々地球を吹き荒れる砂嵐の警告を掴みますが、「EVE」には未知の現象のため二人は避難できず砂嵐に飲まれてしまいます。視界が完全に失われた中、彼は「EVE」を引っ張り自身のベースメントへ避難する事ができました。 ベースメントには彼の代替パーツをはじめ、好奇心から収集してきた道具やおもちゃ、インテリアが揃っていて彼は自慢のイルミネーションや収集した物達を「EVE」に披露しました。 その中で彼は「EVE」に植物を見せます。いったんあらゆるものをスキャンする「EVE」は、差し出された植物を認識すると自身へそれを格納し完全なスリープ状態となってしまいました。 彼はあらゆる手段を以て「EVE」を目覚めさせようと、または修復しようとしましたが効果はなく、そのまま「EVE」を回収するロケットが地球へやってきて「EVE」を格納、飛び立ちました。 「WALL-E」はその際、そのロケットの外側に張り付き、地球を旅立ちました。 彼は宇宙旅行を楽しんでいましたが、暫くの航行の末に大きな宇宙艦「AXIOM」を見ました。 AXIOM到着後、「GO-4」がスリープ中の「EVE」が植物を所有している事を確認すると艦長室のある艦橋へ輸送しました。「WALL-E」はそれに密かについていきました。 艦橋で艦長立ち合いのもと「AUTO」によって再起動された「EVE」は、収納内部の取り出しを試行されましたが、「EVE」が確かに収納していたはずの植物はそこにありませんでした。 艦長は「EVE」を故障と判断し誤動作の原因解析を求める一方、そこに一緒にいた「WALL-E」も「綺麗にしろ(Have... eh, WALL-E cleaned)」と指示し、二人は修復室に輸送されました。 修復室の奥には処置室があり、「EVE」は最優先でそちらに入れられましたが、「WALL-E」は電子ケージに入れられそれを眺めている事しかできませんでした。[*8] 処置される過程を影越しに見ていた「WALL-E」は"EVEが破壊されている"と誤解したのか、彼は自身に組み込まれているレーザービームで電子ケージを無効化し、処置室に飛び込んで処置ロボットが持っていた「EVE」の右腕を奪いました。 ただ、この右腕はレーザー銃が搭載されていて、且つこの状況ではアクティベートされていたため処置ロボットが「WALL-E」から右腕を取り返そうとした際、レーザーが発射されてしまいました。 レーザーの向かった先は修復室の分電盤(のようなもの)で、これが破壊され処置室内の電子ケージに囚われていた故障したロボットたちは一斉に飛びだし、「WALL-E」を担ぎあげて修復室を飛び出しました。[*9] 異常を察知した「SECURE-T」6台が緊急出動し、暴走をしていた数十台のロボットを静止させました。 「EVE」は修復室を出遅れていましたが、「WALL-E」含むロボットが静止した事で追いつき、「WALL-E」から右腕を取り返しました。しかし、その場面を銃火器を露出している瞬間として「SECURE-T」に撮影されてしまい、全艦放送で危険なロボット(Rogue robots=ならず者ロボット)として速報されてしまいました。 「EVE」は「WALL-E」を即座に地球に返すべきだと判断し、脱出時の宇宙航行用の救命ライフボートに乗せようとしましたが、ライフボートの制御室に何者かが入ってくる気配を感じ取った「EVE」は起動していたライフボートをシャットダウンして「WALL-E」と共に隠れました。 制御室に入ってきたのは「GO-4」で、彼はなんと自身の収納機能から植物を取り出し、自爆機能を有効にした上でライフボートを発射させました。 なぜかライフボートに滑り込んでいた「WALL-E」はライフボートの自爆から無傷で生還し、ゴミを圧縮するためのボディの中に植物を保管してEVEに引き渡す事ができました。 その後、EVEは「WALL-E」に待機を指示し、ダストシュートを登って艦長室に向かい艦長に植物を引き渡します。「WALL-E」は無言で待つ事ができず、「EVE」を追いかけてダストシュートを登り始めます。 AIハンドルの「AUTO」は、AXIOMの総指揮をする会社「BnL」のCEOから、地球環境の復元は不可能のため地球には戻るなという命令"A113"を受け取っていました。しかし、艦内では植物を認識すると自動で地球へ帰還する機能が備わっているため、「AUTO」は植物が命令に背くトリガーであるとして排除を試みていました。そのため「EVE」が艦長に植物を渡した後、艦長と「AUTO」は植物を巡って若干のもみ合いとなり、結果的に植物は「AUTO」から直接呼び出された「GO-4」のトラクタービームによってダストシュートへ投げ入れられてしまいました。 しかし、ダストシュートからは「WALL-E」と共に植物が出てきたのです...が、「AUTO」が即座にダストシュートへ向かうとスタンロッドを有効化し「WALL-E」の基盤を電撃で焼き、植物と共にダストシュートの中へ落としました。ついでに、「GO-4」のトラクタービームに捕捉されていた「EVE」は「AUTO」によって機能停止させられ、そのままダストシュートへ落とされてしまいました。 「EVE」はダストシュート内でネズミロボットにより再起動され、「WALL-E」を探したものの、二人は「WALL-A」によって圧縮されたゴミの中に閉じ込められた状態となってしまい、そのまま破棄用エアロックに送られてしまいました。宇宙に廃棄される寸前、「WALL-E」の汚染を辿って来ていた「M-O」によって二人は宇宙に捨てられずにすみましたが、「WALL-E」は「AUTO」による電撃によって基盤に致命的な破損を負ってしまい「EVE」に地球へ帰還させるように要求します。 地球にある「WALL-E」のベースメントにはあらゆる修復用パーツがある事を思い出した「EVE」はホロディテクター(=The Holo-Detector: 植物を認識させる機械)へ植物をセットして地球へ帰還する事を決心し「AUTO」が出動指示した数十台の「SECURE-T」を「HAN-S」の助けを借りて突破した後ホロディテクターへ到達しました。 しかし、その間に艦橋に入る事に成功した艦長と「AUTO」は激しいもみ合いをしており、ハンドルである「AUTO」がもみ合いによって回転することで艦自体が傾き、これの影響でホロディテクターへの植物設置の一回目が失敗し、人波の中に植物を落としてしまいます。 「EVE」は「WALL-E」をホロディテクターの側へ置いて植物を探しに向かいますが、「AUTO」はそれに構わずホロディテクターの終了を試行し、「WALL-E」はホロディテクターの格納によって押しつぶされ、基盤の損傷だけでなくボディ全体が完全に損壊し再起不能な状態になってしまいました。 艦橋では艦長が「AUTO」を制圧して艦のバランスを取り戻し、植物は無事ホロディテクターへセットできたためAXIOMはその場で地球へ帰還する事が確定しスーパージャンプを経て地球へ戻ってきました。[*10] 終盤、「EVE」は「WALL-E」のベースメントで「WALL-E」の腕やキャタピラ、基盤や電子回路の修復に努め、起動に成功しました。 しかし「WALL-E」は自身のコレクションを圧縮処理してしまったり、仲の良かったゴキブリを踏み潰しても気に留めなかったりと完全に知性を失ってしまっていました。 「WALL-E」は物語冒頭から"誰かと手を繋ぐ"ことに憧れていました。「EVE」もまた、自身が地球上でスリープしている際の監視映像から、献身的な「WALL-E」の映像と「WALL-E」が誰かと手を繋ぎたいと思った理由である映画"Hello Dolly!"の映像を見たことで、「WALL-E」と手を繋ぎたいと思う心が芽生えていました。実際、ダストシュートの下で「WALL-E」が地球へ戻る意思を伝えた際、「EVE」から手を繋ごうとアプローチしています。(「WALL-E」は地球帰還を求めたためそこで手を繋ぐ事は果たされませんでした) しかし、知性を失ってしまった「WALL-E」はかつての「WALL-E」とは違っていたため、EVEは諦めてその状態の彼の手を握り、「It Takes A Moment (from Hello Dolly!)」のメロディーを奏でると、そのあと彼は知性を取り戻します。[*11] 彼は驚いた様子で繋がれている手を喜び、物語は結ばれます。 クレジットでは、人類が地球に戻り、自然と人間らしさを"ロボットを交えつつ"取り戻していくさまが描かれています。 以上があらすじですが、本章では骨格部分と本稿の各章で特に必要となる場面並びにそのキャラクター以外は省いています。 本稿ではこのあらすじを骨格としながら、私の人生の中で定点観測したロマンや論考を重ねていきます。
脚注
*1 :「WALL-E」本編 01:08:48 "A113"の発令映像「全てのオートパイロットたちに告ぐ」。オートパイロット(AUTO)はAXIOMで単一の存在のため、この映像は作中のAXIOM艦だけに"送付された"ものではなく複数のAXIOM艦もしくはそれに相当する地球脱出船に"配信された"ものである事がわかる。 *2 :[補足]このゴキブリは「WALL-Eへのコミュニケーション」「WALL-Eから受けた指示の遵守」そして「WALL-Eの記憶の状態を過去の経験から確認する行動」により高度な知能が明示的に描写されている。 *3 :「WALL-E」本編 00:05:06 「WALL-E」のベースメントのボディ表面に記載あり。 *4 :「WALL-E」本編 00:04:21 破損したWALL-E達 *5 :「WALL-E」本編 00:06:04 "WALLE TRANSPORT"の記載。「WALL-E」達を清掃拠点へ輸送するものだったと解釈可能。 *6 :「WALL-E」本編 00:44:17 艦長「Captain B. McCrea」 *7 :「WALL-E」本編 00:17:02 飛行中の「EVE」がソニックブームを起こす描写あり。 *8 :電子ケージ 作中に明確な名称がないため、便宜上この呼称を用いる。実態はないものの、電子的な何かを用いて物理的な檻の役割を果たしている。 *9 :ロボット達は電子ケージが無効化したため結果的に外に出てしまったというわけではなく、電子ケージが無効化した事を認識して飛び出している。ここからは「檻を出たい」という意思の介在を読み取る事ができる。 *10:「WALL-E」本編 01:23:00 AUTOを制圧した=制御方式を「Automatic」から「Manual」に変更しただけ。 *11:「WALL-E」本編 01:28:26 「WALL-E」が知性を取り戻した理由については解釈の余地があり、「手を握ったこと」「EVEがWALL-Eがよく知る曲のメロディーを奏でたこと」「時間経過」など複数の因果関係が考えらるが、現時点では不明。
第三章
少年と社会人では変化している物語
映画自体はもちろん公開当初から少しも変わりませんが、あらすじを含む作品全体を捉える視点は私の年齢や蓄えた知識によって少しずつ変化していきました。 初めて見た小学生の頃はメッセージ性というよりも次章で示すようなロマンや物語の面白さという部分を純粋に受け取っていましたが、小学生も高学年くらいになるとまずは環境問題が目に入るようになり、社会人までで物語のメッセージ性や人間の尊厳について思考を深めるようになりました。 社会人になり情報システム分野を深め、そして法学に想いを馳せるようになってからはAXIOM内のシステム構成や、WALL-Eをはじめとする作中のほぼ全てを開発した一般企業「BnL」について、新たな視点を次々と発見していきました。 なぜこんなに何度も「WALL-E」を見ていたのかという部分については、ただ私がその時々で"また見たい!"と思っていたからであって、それ以上の理由を探ろうとすると私の潜在意識という限りなく内面へ向かう旅に出かける事になってしまう事と、そもそも幼少期の記憶は曖昧である事からこの理由について特に深追いはしていません。 私の場合、分析的な視点を持つと殆どの場合に批判的、批評的な視点で作品を眺める事になります。それによって現実的ではない設定上の演出を感じた際に失望してしまったり、分析し切ってしまう事で作品の持っていた味や感動を感じる事ができなくなってしまう事が非常によくあります。 本作品の面白いところは、そんな分析的な視点を持っていても尚、物語が色褪せることはなく、展開そのものや新たな視点の発見が私を楽しませてくれるところにあります。 ここからは主観のロマンを第四章、内容を分析したうえの論考を第五章から第九章にかけて、それぞれ綴っていきます。

第四章
ロマンの物語
まずは本作品が見せてくれるロマンについて、私の主観を全面に語っていきます。 ①ロボット まず私が第一に惹かれたポイント、それは本作にロボットが登場する事です。少年時代の私は何故だかロボットや機械的なものがとにかく好きでした。例えば汽車だと車輪がある部分をいつも見ていましたし、段ボール工作ではロボットを想像して作ったものも沢山です。父が自衛隊員のため自衛隊の広報館に行くことがよくあったのですが、実物のジェットエンジンの断面や電装部品の展示等ではとにかく興奮していた記憶があります。私はロボットとは知能を持ち人間と似た見た目をしている物、という形で定義していて、それはアシモの影響を大きく受けていたのだと思います。 小学生の頃には電気や電子工作について学べる講座兼ワークショップのようなものに通い基礎的な電子機器の工作をできるようになり、中学では野球部に所属する傍ら、相方と一緒に中高生向けのロボコンへも熱を向けていて、トルクや電源効率を考えた単純歩行のロボット工作をしていました。(県大会を勝ち越し、東海中部大会に出場しています。結果は敗退でしたが...) このように昔からロボットや機械にロマンを感じ、それと共に生きていた私は小学生で初めて「WALL-E」を見た時に、もう"めちゃくちゃ"興奮したのです。 "地球が今とは違う姿になっている程"の未来では、ロボットが会話をして、岩を吹き飛ばすくらいのビームを放って、椅子は自動運転に加え浮遊していて、ハンドルが赤い目を持ち回転しながら動作して、でもくしゃみをするロボットがいたり、何にでも化粧をするロボットがいたりするかもしれないんだと。そしてそれを現実の未来に重ねたことで確実に進歩している現代のロボット産業に大きく期待を寄せていました。 ②宇宙 宇宙は、私にとって未知の象徴であると同時に、星がで溢れる静かで綺麗な空間という、性格的に物凄く惹かれる要素を持っています。これは幼少期の頃だけでなく今も同じです。 よく考えると、アニメやゲームなどでは宇宙に関連したものを非常に好んでいたようです。 分かりやすい例で言うと、松本零士の「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」はまさに私の子供心をくすぐり、すぐに私の心は松本零士の世界観に良い意味で囚われていました。宇宙を旅行するだけでもロマンの塊なのに、宇宙を走る汽車や宇宙を行く戦艦なんて、これほどまでに強い刺激はそうそうありません。銀河鉄道999が地球を飛び立つシーンは今見ても鳥肌ものです。 ゲームでは「Super Mario Galaxy」が今でも最も好きです。宇宙の広さを感じさせてくれると共に、宇宙では孤独である事を実感させてくれて、しかし助けてくれる存在は居て、音響はフルオーケストラで...。上質な孤独を美しい音楽と共に彩ってくれる、そんなゲームです。 このように宇宙を題材にした作品には強烈に惹かれるため、ロボットという要素だけでなく宇宙という要素でも例外なく惹かれていました。実際に作中では、地球を飛び出して宇宙を旅する「WALL-E」と、宇宙空間専用の曳船や近未来的な宇宙艦という要素があり、これらも私を虜にしました。 ③恋愛 自分で言うのも恥ずかしいのですが、学生時代の私は小学生の頃から超のつくほど恋愛体質でした。 そのため、作中ですれ違いと追い追われがありつつ最終的に恋が結ばれるという描写、さらに「WALL-E」が干渉したことで「ジョン」と「メアリー」も恋愛関係にさせている事が私の中ではとても面白く、別々のタイミングで思いを寄せる「WALL-E」と「EVE」からは私も恋愛のロマンを刺激として受け取る事ができ、恋愛はロボットや宇宙という要素に加えてこの作品をさらに好きにさせた要素になります。 小括 これら三要素は私を現実世界からSF世界へ導くのと同時に、私が興味を持っていた事に対してダイレクトヒットする形になりました。 正確に言うと、三要素が独立して私を好きにしたというよりも、全ての要素が混ざり合った結果として本作品を好きにさせたとなります。孤独の地球で生き、愛するロボットを求めて宇宙旅行をし、たくさんの仲間に囲まれ尊敬され、最終的には「EVE」と手を繋ぐ事ができた「WALL-E」。この賑やかすぎず、孤独すぎる事もないバランスと舞台が私を引き付けたのだと思います。人は、ロマンというものをジャンルの差はあれどどう足掻いても持ち合わせてしまうものだと思っているので、たまたま宇宙とロボットと恋愛に対して強いロマンを持っていた私はいわば必然的に「WALL-E」を好きになったのでしょう。 ただ、「WALL-E」の何が好きなの?と聞かれたら上記三要素を挙げる事になりますが、実際はもっと細かく好きな要素があるので、それはまた別の形でまとめようかと思います。

第五章
地球環境へのメッセージ
前章では私が感じる主観的なロマンについて触れてきましたが、本作品はロマンだけで構成されているわけではありません。 ここからは内容に沿いつつディストピアとして描かれている持続可能性を失った地球について、一旦主観を置いて読み解いていきます。 本作品における最も強いメッセージ性、それは地球環境の持続可能性に対する警鐘でしょう。 本作品は、いかに地球が汚染されているかが細かく描写されていました。「WALL-E」が活動している恐らく街に当たる部分は、大量のゴミが散乱しているものの比較的片付いていると判断できます。 それも、物語冒頭部分では未処理のゴミの山が大量に描かれているためです。街に近づくにつれてゴミの山はゴミタワーとして乱立するようになっています。 ここでまず私が疑問に思ったこと、それは「ゴミの処理」に対する作中での表現です。 地球でのゴミ処理 「WALL-E」は"ゴミ処理"として当然のように次のプロセスを繰り返しています。それはゴミを集めて圧縮し、ブロック状にしたものをゴミタワーとしてひたすら積み上げる、という事です。 果たしてこれは"ゴミ処理"と言えるのでしょうか? 地球上でのゴミ処理についてですが、本来ならば大まかに次のようなプロセスがあるべきです。 まずは分別、分別されたものを業者が回収、その後可燃物は焼却、そうでないものは素材別にリサイクル、最後に焼却して出た灰は埋め立て。 「WALL-E」のゴミ処理プロセスはこのどの工程にも当てはまりません。 ゴミを積み上げる事が何を意味するのか? ここからは完全に私の想像ですが、ゴミ処理のプロセスは存在したが、その処理が追い付かないほどに物とゴミが溢れ、余ったゴミが散乱し始めるようになり、さらに植物が無くなった事で焼却に係る酸素の使用が問題視されたため焼却処分場は操業を停止させられた。そしてはじめはゴミを一時的に集めて後々処理しやすいように配置しておく事を使命としていた「WALL-Eたちゴミ処理ロボット」のうち、残った「WALL-E」が700年の時を経て独自の判断でゴミをタワー状に積み上げるようになった...という考え方です。 なぜなら、破損した「WALL-E」が溢れている場所では、「WALL-Eたちゴミ処理ロボット」は専用の機械を使用してゴミを積み上げている描写があるためゴミの積み上げには何らかの後続プロセスにつながる意味があったのだと想像する事ができます。[*1] ※酸素が薄くなったことについての考察は第八章の法律分野で深めていますのでここでは流して頂いて問題ありません。 宇宙でのゴミ処理 また、AXIOM艦内での"ゴミ処理"を担っている「WALL-A」も、ゴミを集めて圧縮し、ブロック状にしたものを積み上げて宇宙空間へ放り出す、というプロセスです。 これは宇宙にそのままゴミを投棄するのと何が違うのでしょうか? 肯定的な考察をしてみます。ゴミの船外投棄に当たって廃棄用エアロックが使用されている事に着目すると、酸素を含んだ空気が船外に出る可能性があるプロセスにおいて空気をできるだけ逃さないように工夫されている事が考えられます。廃棄用エアロックはただ船内と宇宙を隔てているだけでなく、できるだけ多くのゴミを、できるだけ空気を失わないように船外へ投棄するための仕組みであると考える事ができます。 それでも、再利用や焼却を行わずにただ固めて投棄するという根本的な部分ではかなりのひっかかりを覚えますし、スペースデブリというまた別の問題に対しては処方箋になり得ないという二重の問題を孕んでいる点を踏まえると、結局は問題の本質的な解決になっておらず、ただ問題を先送りにしているだけなのでは?と感じる部分もあります。 固められて積み上げられるだけのゴミ、固められて宇宙に投棄されるだけのゴミ。私たちはこの"処理"に対して違和感を覚える事ができます。もしかすると、本作におけるゴミの処理方法については、この違和感を本章で触れたような言語化を通じて実生活でのゴミ処理に対する姿勢を問い直させるという意味も込められているのかもしれません。
脚注
*1 :「WALL-E」本編 00:04:48 ゴミが集められ、それを運搬する機械が描写されている。
第六章
情報システムとしてのAXIOM
ここでは地球環境から離れ、AXIOM内部のシステムについて掘り下げていこうと思います。 私は社会人になり、職業としてITの世界に飛び込みシステム開発から設計・構築・運用までに触れてきました。 その結果、本作品のロボットの職務分掌と管理体制について新たな視点を発見しました。まずは作中の次の要素を提示します。 ①「WALL-E」の介入によって人間「ジョン」がホバーチェアから落下した際、「SECURE-T」が二台駆け付けたが、「お助けロボットが助けに参ります」というアナウンスと他のホバーチェアの交通整理しか行わなかった。 ②"植物を保持している"「EVE」の頑丈すぎるアーキテクチャとAXIOM。 ③艦長が独断で地球への帰還をするような発言をした際、「AUTO」は「GO-4」を即座に呼び出し、「GO-4」は即座に駆け付けた。しかし「AUTO」は「EVE」の行動を止めるために、大量の「SECURE-T」を艦橋の"コンソール画面を手動操作"し、派遣した。 前提として、メタ的に考えればこれらの要素は映画を物語として進行させる上で必然的なものであり、本設定を批判する目的ではない事をご承知おきください。また、以降メタ的な要素には触れずに論考を展開していきます。 職務分掌が意識されたロボットの権限 「SECURE-T」にはトラクタービーム(赤)が搭載されていて、対象の静止、持ち上げ及び運搬を可能にしています。「EVE」がダストシュートから艦内に戻った場面で、「SECURE-T」がそのトラクタービームを使用し故障中のロボットを運搬しようとしているシーンがある事から、人間「ジョン」が落下している所へ駆けつけた際に彼を持ち上げホバーチェアに戻す能力は十分にあったと考えられます。 では、なぜ助ける能力を持つ「SECURE-T」は待機指示と交通整理しか行わなかったのでしょうか。 ここで我々の現実世界に参考となる場面が存在します。様々なケースがありますが、ひとつ例を挙げると"交通事故の現場"と"道路異常の対処"です。 例1:普通乗用車を運転する人間Aが片側一車線の道路を走行中、カーブを曲がり切れずにガードレールに衝突するという単独事故を起こしました。人間Aは衝突の痛みに苦しみながら警察通報のみを行いました。パトカーが到着すると2人の警察官が駆け付け、一人はAに聞き取りを開始しもう一人は交通整理を開始しました。聞き取りの結果、Aは額に大き目な怪我を負いひどいむち打ち症状を訴えていたため警察官は救急要請を行いました。警察官はAの身体的ケアや傷の処置は行わず、到着した救急車にAを引き渡すと現場検証を開始しました。 例2:ある県道で倒木があると通報を受けた警察官は現場に急行し、倒木を目視しました。倒木により上下線共に交通が封鎖されている状態だったため、警察官は倒木を撤去し、付近に複数ある山の各管理者らへの事情聴取を開始しました。 どちらの例も警察官の対応として適法・妥当な内容になります。これを本作品の「SECURE-T」の行動を"警察官"として照らしてみると、交通整理はすべき事、倒れている人間にはその対処専門の権限を持つ別機能の到着を待機すべき事、それ以上の対応は保留すべき、という判断をしているように読み取る事ができます。別のシーンで故障中のロボットがいる際にトラクタービームを使用して運搬しようとしたのは、その対象が人間ではなく、加えて異常の除去という警察業務に対して妥当であるからという解釈もできます。 以上の事から、「SECURE-T」はAXIOM内部の警察官として機能しており、その対応可能な範囲・権限が厳格に制御されている事に気づきます。特に人間へ直接介入する分野については対応範囲外となり人間への接触、又は医療行為を専門とする専用の機能に職務を移譲する仕組みがシステム設計(法整備があるかは不明)に組み込まれていると理解する事が作中描写と以上の例から読み取る事が可能です。 超高セキュリティ機構である「EVE」 「EVE」が持つ過剰すぎると言えるほどの植物の保持機能②については、AXIOM航行の目的が大きく影響していると考えられます。すなわち、艦長室には植物発見時に密室となる仕様、植物発見時に乗客全員を集会させ植物をその場で分析し即座に地球へハイパージャンプをする仕様、AUTOの視覚画面上に存在する「植物」マークの配置。これらは全てAXIOMが「植物が見つかるまでの間航行を続け、植物が発見され次第即地球へ帰還する」という仕様がAXIOMという艦の設計構想自体に組み込まれていると解す事ができます。 なぜなら、AXIOMが地球を飛び立つ描写から地球でAXIOMが製造されたことが考えれますが、その時から先述した三要素が存在していたとするならば航行は植物の発見によって即座に終了し、AXIOM自体は航行開始その時から常に植物を待ち受ける態勢が整っていたと理解できるからです。 それを踏まえると、惑星とAXIOMの橋渡し役である「EVE」は、AXIOMが持つ帰還機能をトリガーできる唯一の存在という事になり、いかなる外部環境や外部惑星からも確実に対象を保護し持ち帰る事が求められます。 そのため、「EVE」は植物を認識したらそれを格納し、意思とは無関係にその保管のみを確実に行い、電撃や物理的圧力にも耐えうるシールドを持ち、"植物を持っているかどうか"という情報は艦橋系のロボットがスキャンする事でしか伝達されないというかなり特徴的なアーキテクチャを持っている事が伺えます。[*1] 実際に、「GO-4」は自身のスキャナーでEVEをスキャンするまで植物を保持しているという情報を得る事が出来ていませんでした。逆の言い方をすると「GO-4」がスキャンするまで、「WALL-E」を除き輸送ロケットを含む艦内では"EVEが植物を保管している"という情報が入っていなかったという非常に厳格な情報管理をしているという事になります。 まとめると、これらの要素を持つ「EVE」は、基本的に周りの環境や情報伝達を信用せずに強固な保護を実現する"ゼロトラスト"のような考え方を体現したような存在となっている事がお分かりいただけるかと思います。 AXIOM内ロボットのシステム設計 ③は本章で私が最も触れたかった項目、管理体制について展開していきます。 一般的に、システムは稼働系のシステムとそれを監視する管理系または監視系システムの二レイヤーが存在します。これは、ある系列に存在するシステムが正常に動作しているか、または使用されているコンピュータ資源は適切であるかなどの情報を常時採取し、異常があれば即時対応、異常がなくとも機能改善や最適化を行いやすくするという目的のもと構成されます。 また、その系列の機能を管理する者が明確なのであれば、分割された機能を階層構造にし、管理者を頂点としたトップダウン構造であっても不思議ではありません。 本作品では艦長が人間を束ねる人間の管理者兼責任者であるように、「AUTO」が全てのロボットを統括するロボットの管理者であってもおかしくはないのです。そしてもし「SECURE-T」が監視系システムとして存在していれば、艦内秩序の保全に対して効率的且つ合理的です。作中で例を挙げると、艦内の異常は「M・O」の脱線やスリープ中の「EVE」を運搬する際に「WALL-E」が引き起こした交通事故を含め「AUTO」等艦橋系ロボットが艦内で発生した出来事全てを掌握する事ができ、「EVE」の機能に介入して植物の移動を即座に停止させたり、わざわざパネルを手動操作する事もなく無線のやり取りで「SECURE-T」を出動させたり、そもそも故障ロボットを反逆させる前に機能停止させたりする事が可能になると考えます。 しかし、実際にトップダウンの構造が働いているのは艦橋系ロボットの間でのみという事になっています。すなわち、「AUTO」が「GO-4」を管理というそれだけの構図です。「EVE」や「HAN-S」等の艦橋系以外のロボットは直接「AUTO」によって管理されていないのです。 さらに踏み込むと、「AUTO」が「GO-4」を呼び出す際は接続された情報伝達経路を使用して「AUTO」の持つ機能から直接呼び出していますが、③で挙げた通り、「AUTO」が「SECURE-T」を呼び出す際は艦橋にある操作パネルから手動で呼び出しています。この操作パネルは勿論艦長も操作可能なもののため、「AUTO」由来の直接の機能として呼び出しを行っているわけではありません。これは艦橋の持つ警察出動の特権だと言えるでしょう。 この構成は「統合管理」や「集中制御」という概念とは違う考え方によって構築されていると言わざるを得ないです。すなわち、「GO-4」を除いた全てのロボットは独立して制御され、いずれも監視対象ではなく、「AUTO」から直接介入される事もなく、反逆や逃走といった行為も可能であるという点です。加えて全てのロボットが独立したそれぞれの意思と知性を持つ描写がされています。 ここで二つの可能性が考えられます。   まず一つ目、ネットワークを介したハッキング等の悪意の侵入によって、またはシステム障害によって艦内の全機能が機能不全に陥る可能性(=単一障害点)を排除するため、二つ目は、全てのロボットがそれぞれ人格(に値するもの)を持つものとして保護される権利を有している可能性です。 前者について、トップダウンで全てのシステムが一つの管理システムに接続している場合、管理システムである上位システムが障害に陥ったら上位システムに管理される下位システムも障害となってしまいます。また、下位システムがハッキングされた場合、同一ネットワーク上に存在している上位システムまたは管理システムにもその影響が波及する可能性があり、その場合もシステムは全て機能不全に陥るため、大量のシステムを保有していて脆弱性の評価が際限のない場合はシステムを分離してしまうというのも一つの対策となり得ます(=分散制御)。実際に、艦長が艦長室に監禁された際には艦橋系ロボットは明らかな暴走という状態でしたが、その他艦橋系以外の正常なロボットは通常通りの業務継続をしており「EVE」等反逆を行っているロボットに対しての何らかの制圧行動は見られませんでした。 後者については法律に関する第八章で詳しく見ていきますが、ここではその可能性もあるという事で留めておきます。 以上の事から各ロボットはトップダウン的に統合管理されておらず、独立した個体として扱われているという事です。これはシステム設計という観点で見た時に非常に印象的な構成で、あえて集中的に全てを管理する事なくシステムを分散させることによって、艦内の秩序を制御するという設計になっているという事は現代でいうIoTの分散型アーキテクチャの考え方に通じるものがあります。
脚注
*1 :「WALL-E」本編 00:30:13 EVEの持つ特殊なシールド
第七章
人類の尊厳
地球を離れる事で存続した人類は、AXIOMの中でロボットと「共に」生活している様子が描写されています。 地球で広報されているAXIOMは人類がロボットと共同生活を営んでいる様子がありますが、700年経過している実際のAXIOM艦内ではロボットの支援を基盤として人間が生かされているという状態となっています。つまり「共に」というのは「相互扶助」ではなくロボットから人間への一歩的な「支援」により、人類は生きるのに必要とされる殆どの機能を不足なく提供されている状態です。 本章では、作中での人間とその尊厳について読み解いていきます。次章の法律にも深く関連する分野となります。 尚、本章では"尊厳"を、人間が人間個人として尊重される事、情報が偏らず文化的な教育を施されている事、身体的な自由が確保されている事として扱います。 文化の喪失とプロパガンダ まず、尊厳について考えるにあたり、作中で象徴的なシーンを三つ挙げていきます。 ①ナニーロボットによる幼児への教育「A AXIOM。あなたの家。B BnL あなたの友達...(A. It's for AXIOM your home. Sweet home. B for Buy and Large. Your very best friend....)」00:41:14 ②艦長が紙の本を開く術を知らず、「AUTO」が実際に本を開いて見せる。 ③「EVE」の録画映像を再生した際に聞こえてきた「Put On Your Sunday Clothes」を聞いて「知ってるぞ、その曲...ダンスだ(I know that song. It's... it's dance they're dancing)」と発言する。 これらから、幼少期からの徹底的なプロパガンダや思想の植え付けを行われているのがあの艦内に生きる人間たち、という事になります。①が歪なのは、まだ発達段階の乳幼児から幼児に対して上記のような教育を施しているという部分にあります。言葉をロボットから教えられ、そしてその内容は企業を肯定しその下で生きる事を植え付ける内容というのは、主観的にかなり恐ろしいと感じざるを得ません。また、艦内アナウンスで「新たなカラーは青です」と告知された際に、例外なく全員が青を選択した事からも、人間がいかに主体性を欠き、AXIOMの中で提供される公式のメッセージがどれほど大きな影響力を持っているのかという事を伺い知る事ができます。 さらに、最も知識が深いであろう艦長ですら地球の存在を知らず、本と言う知的アクセスのための物の存在も知らず、という状態だったため、極端に偏った教育が施されていた事実を作中から読み取る事ができます。 文化を継承するのが人ではなくロボットであるという意味も込めて②、③を挙げているのですが、③について補足をしておくと、艦長は地球について調べる過程でダンスについても触れていました。しかし、そこでのコンピュータへの聞き方は「ダンスって何だ?」です。ここからも文化の喪失をありありと読み取る事ができます。 本の開き方は「AUTO」に教わり、ダンスは「EVE」を通じて「WALL-E」から教わっている、これは人類の文化を保存しているのが人間ではなくロボットで、人類は文化を継承していないという点も非常に象徴的ですが、根本的に教育の中で文化が含まれていないという事が大きな問題です。これが私が第二章で「人類はAXIOMによって生かされている」と表現した所以で、人類は自らが主体性を失っている事にすら気づいていなかった所、艦長だけが「WALL-E」の介入によってそこに気づくことができ、「我々は生かされたいんじゃない、生きたいんだ(I don't wanna survive. I wanna live!)」と発言したことで、この瞬間にようやく人間が主体的に人間として生きる「尊厳」の一部が回帰したのだと考えるとただ決意と責任に満ちたカッコいいセリフという以上の意味を見出す事ができます。 個の喪失と全体主義 AXIOMが初めから人間を長期航行によって個人としてではなく集団として扱う事を想定していた可能性も次のシーンから推察する事ができます。 ①植物発見に対するBnLのCEOのビデオレター「長期間の無重力航行によって骨が細くなっているかも(Now, due to the effects of microgravity, you and your passengers may have suffered some slight born loss.)」 ②ホロディテクター起動時、艦内放送や説明等は一切なくホバーチェアがただ移動する事によってのみ集会を実現させている。 これらから、BnLは700年前から、超長距離航行は想定内であり、全員が肥満体型になっている事も予測済みであり、さらには全員が全員ホバーチェアに乗って自力で移動する事を放棄している事までも織り込み済みだったという事がわかります。 これはBnLによる単純な予測なのかそれとも計画上の目標なのかを判断するには情報が不足していますが、少なくとも"超長距離航行を予測した上で当分は地球に帰還する予定はなかった"という解釈につなげる事は可能であると考えます。 なぜなら、当初は"5年間の宇宙旅行"を謳っていたという前提を踏まえると、①の予測や②のアナウンス無しの集会の実現は、①はまず5年では間違いなく全員に対しては起こり得ない人体の変化で、その上で誰も歩かなくなるだろうという②も5年という短い年月では実現しないからです。実際にAXIOM出航の広告では歩行する人間が立ったままボールをパスするシーンがありますので全員が歩かなくなるというのは超長期間の変化だと考える方が自然です。 すなわち、5年間の宇宙旅行と銘打っていたBnLは元より地球へ5年で戻る想定はなかったと考える事ができ、人間としての個人を尊重するというよりも全員を一律に管理するという、尊厳とは逆の方向へ向かっていったという可能性が挙げられます。[*] 以上の事から、AXIOM艦内またはBnLは人間を一人の個人として尊重するわけではなく、管理下の人類というようなまとまりで扱っていた可能性が示唆されます。これは人間の教育・文化・身体といった観点で、尊厳が守られている状態とは程遠い状況と言え、そして人間は疑う事もなく当たり前のようにそこで提供されるサービスを享受している事からAXIOM内部がいかに歪な空間となっているのかが分かると思います。 人間が持つ権利(人権)については、ロボットの持つ権利との対比として第八章で詳しく読み解きますので、もう暫くお待ちください。
脚注
*1 :5年で戻る予定がないだけなのか、一生地球に帰還するつもりがなかったのかは根拠に乏しいため判断できない。
第八章
法律の視点から見た物語
法律と聞くと少し硬く聞こえてしまうかもしれません。しかし、ここまで読んでこられたあなたなら大丈夫です。 本章ではBnLという企業や人間とロボットの人権について、法律の観点から仮説と論考を加えていきます。 先にお断りを入れておくと、本章で展開する視点は前提として"説明不足が許容され且つ脚本が存在する物語作品の解釈"であって法学的な論証であったり学術論文的な証明であったりするわけではない事を承知いただけると幸いです。 世界を支配した一企業「BnL」 まずは最も本作で歪な存在、BnLという巨大企業について展開していきます。 作中で拾う事ができるBnLの要素は次に示す通りです。 AXIOM艦を製造し宇宙航行を行っていて、宇宙空間では月に広告拠点を保有しています。AXIOM内部はロボットを含め全てBnL製です。 地上では銀行、スーパーマーケット、ガソリンスタンド、貨物船にもロゴが入っている事から金融業、小売業、石油事業、海運業等多岐に渡る事業展開をしている事が作中からはっきりと読み取れます[*1]。 WALL-EはBnLが「再植民地化プロセス」において地球上のゴミ処理を行うために作成したロボットですし、そのクリーンアッププロセスの間、人類へ"5年間の宇宙旅行"を提供したのもBnLです。 BnLのCEOに対しては映像上で"GLOABAL CEO"というラベルが表示され、且つ「Mr. President」と呼称されています。[*2] ここから、この要素について私見を述べていきます。 「President」は"議長"や"州長"を示すのではなく国家機関の元首(=大統領)を示す語だと仮定すると、BnLは事実上というだけでなく政府機能を完全に代替もしくは取り込んだ企業国家として存在していると考える事ができ、そのCEOは大統領という位置付けとして国家を指揮している可能性を見出せます。さらに踏み込むと、5年間の宇宙旅行という宣伝の目的語は"人類"であるため、BnLは地球全体のあらゆる人間(=人類)を顧客としていた可能性があり、「地球」環境全てのクリーンアップを目指していた事からBnLの"GLOBAL"なCEOは、ただアメリカの大統領というだけでなく世界政府的な機能の全総括という意味での大統領と解釈する事も若干の飛躍を許すと可能であると考えます。 金融業について注目すると、BnL銀行の付近には大量の紙幣が散乱していて[*3]、よく見るとこの通貨にはBnLの文字が入っている事が分かります。つまりBnLは通貨発行権を有しているという事になるのです。 BnLが政府機能を持つことを踏まえると、この銀行はただの銀行ではなく"中央銀行"として存在していた事を推測できます。ただ、繰り返しになりますが本作中ではその紙幣が"散乱している"のです。紙幣が散乱するという事は人間によって価値を見出されていた紙幣価値が消失している事を意味します。これは単純に"地球から人間がいなくなり帰結的に紙幣価値を失った"と解釈するのが自然ですが、一方で"地球を脱出する時点での人間は既に通貨という概念から解放されていた"と考えても論理の飛躍は無いでしょう。実際にAXIOM艦内は全てBnL製品で完結しているものの、通貨が必要とされている場面が明示されていないのです。 ここまででBnLがいかに巨大な企業かがお分かりいただけたかと思いますが、更に加えると、BnLに対する暴動の記録やBnL以外の経済圏が一切見えない所も象徴的です。これはBnLが経済圏を市場原理に背いたり競争原理から逸脱した行為によったりして"支配しようとしていた"わけではなく、法的にも倫理的にも合法な手段でその事業を民意に基づき各地で拡大させていった可能性を読み取る事ができます。 巨大企業へ機能すべき法律「競争法」 さて、競争に関する法律は日本には「不正競争防止法」や「独占禁止法」が存在しますが、それらと同等ではないものの本作の拠点であるアメリカには「反トラスト法」という独占禁止に関係した法律群が存在します。「反トラスト法」とは「競争制限による価格の上昇などで消費者に不利益が出るのを防ぐため、取引制限や独占などを規制」[引用*5]する米国の法律群で、これは「消費者厚生」に主眼を置き、企業の状態だけではなく消費者への影響も勘案されます。ちなみに、ビッグテックの四柱GAFAはいずれもこれまでに反トラスト法違反で次の順に提訴されています。まずは2010年09月にお互いの従業員の引き抜き禁止協定の中にGoogle、Appleが含まれ、2020年12月にInstagramとWhatsAppを買収している事に対してFacebook(現メタ)が提訴され、最後に2023年9月にAmazonが提訴されています[*6]。 ただし、2014年11月時点ではAmazonはGAFAの"GAF"連中に加え米国小売大手ウォルマート等と競争関係にあるためこの時点で独占状態であるとする根拠はないという事になっていて、2023年までは反トラスト法違反を視野に調査されていたものの提訴はされていなかったという経緯があります。[*7] ここで注目すべきなのが、米国の反トラスト法は消費者の得る利益を最大化するという「消費者厚生」に基づいていて[*8]、最近では競合参入等を視野に含めず消費者厚生への害を立証する必要性に疑問が投じられ再解釈が進みつつある[*11]ものの、アメリカの法廷では長年トラスト(独占)やカルテル(談合)と判断された事象が消費者厚生にどう影響したかという観点で争われていた事実があります。 つまり、消費者がいかに高品質なものを経済的に(=安く)消費できていたかが重視され、事実上の寡占状態でも反トラスト法に問われなかった判例も存在するのです。[*12] さらにEU競争法も見てみます。 アメリカの反トラスト法は「消費者厚生」具体的には"価格×品質"に重点を置いていましたが、対してEU競争法102条は「競争上の制約を受けずに独立に行動する能力を有する場合に発生するとされてい」[*8頁2]ます。つまり、たとえ価格は低く高品質で「消費者厚生」が最大化されていたとしても、EU競争法はその企業が競合他社を抱えずに市場を制圧している市場構造を「反競争的行動」[*8頁2]として扱う事ができるのです。 では、これをBnLに当てはめていきます。 BnLの国際展開を考えるのであれば、米国市場を制圧し、次第に欧州市場も飲み込んでいくという流れが最も自然です。ただ残念ながら、BnLという企業の市場確保について及び市民がそれにどう応じたかを判断できる描写が作中にない事と、それらを示唆するような設定がない事からどのようにBnLが成長したかを考えるのは完全に想像上という事になってしまいます。 しかし「反トラスト法」並びに「EU競争法」を突破してきたという仮定で仮説を展開すると、「消費者厚生」を徹底した事で消費者に"選ばれ続け"、そして構造的に威圧的ではない市場確保・市場掌握をしてきたと逆算的に考える事はできます。構造的に威圧的ではないというのはかなり抽象的な表現となりますが、"宇宙・ロボット産業"と"人間にとって必須な市場"をニッチ分野として確保した事が作中から考えられます。 まず宇宙産業とロボット産業は言うまでもなく最先端且つ超高度な技術力を以て人類を牽引しているという事が出来るでしょう。 加えて、人間にとって必須な市場ですが、これは食料と"酸素"です。 まず食料についてはAXIOM内で艦長が艦内状況を確認するシーンの項目のひとつに「食物リサイクルシステム(Regenerative food buffet)」が挙げられますが、もっと核心的な描写がありました。 それは、地球上で展開されている二つの広告で、一つ目が「100%REUSED FOOD」、二つ目が「LIQUID AIR/ LIQUID OXYGEN」です。 地球には植物も動物も描写されていない事から、地球は植物を失っている事でそれを食料とする家畜も存在していないと考えられます。さらに、CEOが「地球上で光合成を行う植物」と"光合成"を強調している事から、地球上では酸素の生産者がいない事も考えられます。 動物を失った事で、BnLは完全リサイクルで持続可能な食料を提供するようになったと考える事ができ、この技術が直接AXIOMに搭載されていると考えられます。これにより人類は700年間も宇宙空間の艦という極めて閉鎖的な環境上で存続する事ができたのでしょう。 そして、植物を失った事で必要量の酸素が大気中に存在していない可能性が十分に考えられます。そうでなければ、「LIQUID OXYGEN」を商品として提供する必要がないからです。 これにより、人類の「食」と「呼吸」という生命基盤をBnLが高度な生産技術を以て支配するという一本立ちが起きてしまっている状況で、そこに新規参入できる競合他社が育つ土壌が無く、更には操業停止や組織分割をする事で人類の持続可能性や生命に大きく影響する可能性を持っていた、そしてそもそも酸素や食料の供給はBnLによってのみ行われており、"市場という体を成していなかった"可能性を考えると、EU競争法をベースにした指摘、もしくはこれらの状況を総合的に勘案した結果、EU競争法の適用を裁判所が退けた可能性も推論をしてみる上では浮上します。 国家として成立し得る企業「BnL」 ここで企業国家としてのBnLという仮説を更に補強する事ができます。 国家の成立には次の4要素「国民、領土、政府、そして主権を基に他国と関係を築く力」[*9引用]が必要となるようです。 BnLはどうでしょうか。国民はAXIOMに乗船している人間が大量にいる時点でBnLの顧客がそれである事がわかります。加え、地球規模のクリーンアッププロセスを実行できる所から世界的に十分な領土を掌握していると考えられます。BnLのCEOが「Mr. President」と呼ばれる所から政府として存在している可能性も考える事ができます。更に、本章前半で通貨発行権について触れました。徴税と通貨の保障は主権的な権能と言えるため主権も持ち合わせていると言えます。このことから、BnLは"国家"として存在している可能性が低くはないと、ここまでの情報を元に考える事ができるのです。 さらに、「食物リサイクルシステム(Regenerative food buffet)」の結果が「変化なし(Unchanged)」であるという所、人間は全員同じ生活をしている事と、貨幣という概念が描写されていない所から、AXIOM艦内は完全な計画経済が動いていると考える事もできます。立憲民主主義の下に住まう我々にとって、少し怖い響きがありますね。 全て作中の描写から想像上導き出せる仮説であり、帰結的に考えると上述の通りになりますが、順序が逆で、先にBnLが政府を掌握して、これら経済的な競争を保障する憲法や法律が変更されたという可能性も考えられないわけではありません。 以上のことからBnLという企業が本作中において最も歪であり法学的にも議論の余地がある企業である事がお分かりいただけたかと思います。 蛇足ですが、少し踏み込むとその状況すらBnLの方針の一部だったのでは、、、という想像もできてしまいますが、結果的な状態以外にそれを支持できる要素が殆ど存在しないため本稿ではこれについて論考は加えません。 人権享有主体としての人間とロボット 続いて、BnLからは少し離れて、AXIOM艦内に存在する人間とロボットの人権享有という部分について展開していきます。 もちろん、ロボットは人ではないので人権と言うのは変だという事は承知で、AXIOM艦内で稼働するロボット達がそれぞれに人格的な存在として扱われているのかという事に焦点を当てていきます。 私たち人間は人権を主体的に享有している事でどんな利益があるのでしょうか。そして、AXIOM艦内で稼働するロボットにその利益は認められているでしょうか。 これは、日本国憲法とそれに付随する権利を見ていくことで整理する事ができます。 まず、憲法十一条では基本的人権は国民に与えられる永続的な権利であると事が保障されています。さらに、十三条では全ての国民は個人として利益を追求する権利を最大限尊重すると規定されています。[*10*11] これを前提として、私たちは人権に関する4つの権利を保持しています。すなわち国家に拘束される事なく自由に生きる事を保障する「自由権」、出自や環境によって差別を受ける事のない「平等権」、人間らしい豊かな生活が保障される「社会権」、政治に参加する事が許される「参政権」です。 私たちは日常生活において「自由権」をあまり意識する事がありませんが、外出する事、絵を描いて公開する事、映画を見る事、この文章を読もうと思って読むことすらも自由権として保障されています。どの時間に何をしようかという事を考え、実行できる事を正当に保障しているのが自由権だと言い換えてもいいでしょう。 そして、「平等権」は個人がいかなる理由でも差別をされずに他の人間と対等に扱われる権利を保障しているものになります。平等権はマジョリティに属していると見えにくいですが、何らかの事情でマイノリティに属する場面や要素があった場合に保障される実感を伴います。バリアフリーの考え方も平等権を実現するために存在しています。 「社会権」は憲法二十五条の「健康で文化的な最低限度の生活」[*14]を送る事に加え、教育を受ける事、文化を継承する事、労働の権利と義務を規定しています。仕事をする事、学校に通う事、文化的な地域交流をする事、または必要な社会保障を受ける事は権利として保障されているのです。そして、選挙権や被選挙権などは「参政権」として保障されています。 さて、現代の私たちはこの恩恵を最大限享受できていると私は考えます。これをAXIOM内の人間、ロボットに当てはめてみましょう。 まずはAXIOM内の人間についてですが、まず「平等権」は間違いなく保障されています。これは艦長を例外にするにしても、一般の人間の扱いに一切の差は描写されていません。「自由権」と「社会権」は微妙なところだというのが私の率直な感想です。 AXIOMの人間は皆、選択的に自身のやる事をコントロールしているように見えますがこの選択肢は非常に狭く、第七章で挙げた教育の場面を見る限り選択に使用できる情報自体も統制されているように見えますし、強制集会が実行される場面は自由からは程遠いです。ただしこれは乗船規約等によって集会の強制は明記されている可能性があり、その場合はこの権利を侵害していると断定する事はできません。「社会権」については生存が保障され教育は強制されているものの勤労や文化の継承は存在していませんので、健康で文化的な最低限度の生活における"文化的"という要素は該当しません。「参政権」については艦長を選ぶ仕組みによると思いますが、一切の描写がない事と「AUTO」は交代しない事から何も判断ができません。これはロボットに対しても同様なので「参政権」については論じません。 対して、AXIOM艦内の知性あるロボット達はどうでしょうか。ここではAXIOM艦内のロボット達は人格的存在として扱っている可能性があるという前提のもとで展開していきます。 全員が職務上の役割を持ち、ロボット同士がコミュニケーションを取る事ができ、AUTOが本の開き方を艦長へ継承している点を踏まえると「社会権」は持っているように思います(人間らしくというのは不整合ですけれど...)。 「自由権」についてもあるように考えられます。「M・O」が脱線したときブザーが鳴ったものの処罰するような機関は動いていませんし、ロボットの通行帯に大量の「SECURE-T」が現れたシーンではその場に居合わせた異常のないロボットは「逃走」しています。これらは、AXIOMが強制的にロボットに動作を指示している訳ではなく、各ロボットが自律的に独自の機能を遂行していると解釈可能で、これは国家権力に個人が捉われない「自由権」が保障されていると解釈できる可能性があります。 「平等権」は艦橋系以外のロボットに対しては通行帯や扱いの差がない事を踏まえると保障されているように見えます。 皮肉な事に、以上の事からAXIOM艦内では見かけ上は人間よりもロボットの方が人権に相当する権利を享受できているように感じます。 第七章で触れたように、人間は文化を継承できていません。これらはロボット達によって再度人間に持ち込まれていて、BnLの教育に文化が含まれない事が示唆されます。そして情報統制。AXIOMの中にある社会では警察や教育、生存保障などの国家的な機能を有しているように見えるのに、人権を保障する憲法や法律は存在しない可能性が高いです。ロボット達には知性が与えられていますが、こちらにも"人間へ危害を加えない"という要素以外に作中から法に縛られる描写は見つかりませんでした。AXIOMに警察行為を行う「SECURE-T」が存在するという事は、これが参照する最低限の規律や規範は存在していると考えられますが、現実の憲法が保障するような人間が正しく人間であり続ける事を保障しているようには見えず、そしてそれはロボットも同様であるもののロボットの方がその中で"より人間らしく"活動していると考える事ができる、というのが結論です。 ロボットは個として保護される権利があるのか? さらにもう一つ、第六章の情報分野で「「GO-4」を除いた全てのロボットは独立して制御され、いずれも監視対象ではなく、「AUTO」から直接介入される事もなく、反逆や逃走といった行為も可能であるという点」について、二つの可能性「単一障害点の排除」と「全てのロボットがそれぞれ人格として保護される権利を有している可能性」を挙げました。 法律分野の本章では後者について掘り下げていこうと思います。 まず何故私がそう感じたのかについてですが、これは艦橋系以外の各ロボットが上位の存在にその行動を縛られず、直接監視下にない事から、日本国憲法で言う所の「個人として尊重」されている自然人の扱いと似ていると思った故です。 先ほどロボットの持つ「自由権」の可能性について触れましたが、そこで挙げた逸脱行動が可能な「M・O」と"恐怖"による逃走が可能なロボット達の他に、その尊重度合いが明確に分かる所が"修復室(Repair word)"です。 AXIOMでは故障が疑われるロボットについて、"破棄"や"解体"ではなく"修復"という手段を取っています。そして、いつでも停止可能な状態になっているにも関わらず、診断待ちのロボットは電子ケージ内で起動されその中では自由に行動する事が認められているようです。閉鎖的な宇宙空間で限られた資源を有効活用するという意味では非常に合理的ですが、効率的に診断と修復を進める上では起動している故障したロボットを管理する手間と電子ケージ内で行動を制限しなければならない空間的な制約とを考慮するとこれは非合理的だといえます。 さらに、修復室奥の診断室"DIAGNOSTICS"はすりガラスによって区切られており、且つ診断室内では3台のロボットがお互いの姿を認識する必要のない配置で診断が行われるようになっています。 ここから導ける仮説は、故障していたとしても、ロボットが起動状態でいられる権利が最大限尊重されること、そして同時にプライバシーも最大限に尊重される、ということです。 そのことから、ロボットは「個」としての尊厳が優先されていて、そのために直接の監視やデータの回収が行われず「AUTO」は各ロボットがどう行動しようとも異常を起こさない限りは知る術は無いという事で、「全てのロボットがそれぞれ人格として保護される権利を有している可能性」を正当化するための根拠とする事ができます。 ただし繰り返しになりますがロボットは人ではないので自然人に与えられる人格ではなく、それに相当する何かしらの権利を享有していると考えるのが自然です。 このように、作中から想像できる中でも市場競争やAI等に現存の法律を適用させてみる事で、作中の描写をより論理的に整理する事が可能になります。私が法学に思いを馳せるようになってから、本作品からはこのような視点が浮かび上がってきました。 最初にお断りした通り、実際の法律解釈や判例適用プロセスの厳密性に照らすと、これまで述べた理論展開は想像による飛躍やこじつけを少なからず許すため、法学的には弱い論理展開と言えます。 そして、可能性に留まる事が非常に多いため物語の解明に強く寄与するわけでもありません。しかし、私の中では革命的な視点の変化だったためこの通り述べさせていただきました。
脚注
*1 :  「WALL-E」本編 00:03:41 ULTRASTORE  「WALL-E」本編 00:03:49 BUY N LARGE GAS  「WALL-E」本編 00:03:54 BNL銀行  「WALL-E」本編 00:04:04 BUY N LARGE TIMES  「WALL-E」本編 00:04:11 BNL TRANSIT  「WALL-E」本編 00:11:19 地上の消化器もBNL製  「WALL-E」本編 00:20:24 ガス貯蔵タンクもBNL製  「WALL-E」本編 00:21:14 土木建設もBNL  「WALL-E」本編 00:21:28 BNL LINES 貨物船(5隻)  「WALL-E」本編 00:33:35 BNL製人工衛星 *2 :「WALL-E」本編 01:08:42 映像内にてBNLのCEOに対して「Mr. President」 *3 :「WALL-E」本編 00:03:52 散らかった紙幣 *4 :「WALL-E」本編 00:40:21 アナウンス「BUY N LARGE everything you need to be happy. Your day is very important to us.」 →本当にそれを理念にしているよう。 *5 :『米国の反トラスト法(キーワード)』(朝日新聞社 -記事検索) 1997年10月22日 *6 :  『メタ「独占でない」勝訴 インスタ買収めぐり 米連邦地裁』(朝日新聞社 -記事検索)2025年11月20日 →メタ(旧F)が買収済みのインスタとワッツアップに関連  『米司法省がアップルを提訴 独占的地位を悪用と』(BBC) https://www.bbc.com/japanese/articles/c03r88l0yryo:2024年3月22日  『賃金協定及び引き抜き禁止協定に関する米国独禁当局の指針とその後の動き』(国際商事法研究所)頁3:https://www.ibltokyo.jp/news/3110 ナンバー: No.14 分類: 3B 作成日: 2019.1 *7 :『(ニューヨーク・タイムズから)米アマゾン商法 独占か、便利さの魅力か』(朝日新聞社 -記事検索):2014年11月07日 *8 :『EU競争法におけるCompetition on the merits理論の意義と先例の展開 ―米国反トラスト法の概念と比較しつつ―』(公正取引委員会競争政策研究センター)2024年8月23日「食べログ事件・ダイレックス事件東京高判から考える最判理論に基づく明日の競争政策」参考資料(2) 関連備考:「EU競争法102条の理論・先例の展開―米国反トラスト法の概念と比較しつつー」2023年2月9日 *9 :『新しい国の作り方 必要な要素は』(BBC)https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-41580180:2017年10月11日 *10:日本国憲法 第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。 *11:日本国憲法 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 *12:『United States v. General Dynamics Corp., 415 U.S. 486 (1974)』(JUSTIA U.S. Supreme Law)1974年3月19日 https://supreme.justia.com/cases/federal/us/415/486/ *13:『基本的人権とは何かわかりやすく解説!歴史や4つの基本的人権も紹介』(スマート選挙ブログ)https://blog.smartsenkyo.com/3461/ *14:日本国憲法 第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第九章
対立構造
この章では最後に、学術的な視点から離れて陣営同士の対立構造を仮説的に展開していきます。 第二章で本作品の対立構造は「艦橋系ロボット」VS「人類」&「艦橋系以外のロボット」であると示しました。 対立する契機は植物が持ち込まれた事、そして指令"A113"が「AUTO」に対して与えられている事の二点に収束します。 「AUTO」は「悪意」ではない ここで「AUTO」の行動を振り返ってみると、700年前に"A113"という命令を受信した「AUTO」は、その"地球には絶対に戻るな"という命令を忠実に履行するために地球帰還に繋がる「植物」の排除やホロディテクターの停止を試みました。 ここで考慮されるべきなのは、「AUTO」は決して「人類を地球に帰させない」という意思や「植物への憎しみ」というような感情は持ち合わせておらず、自身らの最高責任者であるBnLのCEOが出した上で"解除されていない"命令をただ遵守していたという事です。 そこに、植物(*1)と共に"WALL-E"がやってきて、艦長は命令"A113"を認識したにも関わらず尚、地球へ帰ろうとします。"A113"は本来"オートパイロット専用"の"極秘"メッセージでした。そのためこの命令が発令された時点で「AUTO」の方が艦長よりも権限が高かった可能性があり、さらにその状態で発令されている本命令の価値は艦長の意思決定よりも優先されるべきものだと「AUTO」が解釈している事を作中から読み取る事ができます。 「AUTO」から見るとこれは命令"A113"に逆らう配下の存在という事になるため、"A113"遵守を優先するのであれば一時的に艦長から航行権限を剥奪する事を選択をしたのでしょう。これが「AUTO」が艦長を艦長室に監禁した理由だと考えられます。*2 「AUTO」はこのように地球帰還を感情問題ではなく命令遂行の立場で冷静に判断していたのです。 ただしここで反論があります。作中では艦長はこう発言しています。「Look! Green is growing!」 700年の年月を経て、現在は緑が育つ環境になったのだからその700年前の命令は地球に帰還してはいけない理由である「unsustainable」ではない、という主張です。 結果的に「AUTO」を無効化する事により人類は地球へ帰還し、地球環境の復元を成功させました。しかしこれは帰結的にそうなったのであって、"A113"は本来人間の安全を確保するために発令されたものである事は留意しなくてはなりません。 それでも「AUTO」は悪役である それでもこの命令は「AUTO」が遵守している事から"解除されていない"のであり、「AUTO」の立場では航行における最優先事項であるためこの時点でその命令を放棄する事ができる根拠がありません。 このように冷静に分析すると「AUTO」は優先順位に基づいた背けない命令の基、命令の履行を忠実に保ってきた存在という事になります。 ただし、「AUTO」が"悪"ではないように見えてきますが、ここは人類目線で見ると紛れもない「悪」である事は変わらぬ事実であると受け止めるべきです。というのも、「AUTO」は艦長と対峙する際、自身の持つスタンロッドを艦長に向けました。これは艦内で機能を完結させるロボットの中で特別に武装を許された唯一の存在「AUTO」にとって、最も侵してはならない禁忌である「人間への武力行使」を行ってしまったからです。 「AUTO」を除いた艦内のロボットは、故障したロボットを除いて全て戦闘能力を持っていません。これは、武力の必要性をそもそも想定していないか、あるいは制圧のみで事足りるというポジティブな面と、武力行使があった場合人間はロボットに敵わなくなるか、またはロボットの武装を何らかの方法で取得した人間は、それによって支配関係を生むことができてしまうというネガティブな面が存在する事を想像できます。 警察行為を行う権限のある「GO-4」と「SECURE-T」についてはトラクタービームを使用できるため、異常や反乱はこれらによって制圧する事が可能です。その上で、武力を搭載する必要と理由が艦内には存在しないという想定の結果「AUTO」以外のロボットに武装は無いのだと解釈しました。「AUTO」だけ何故武装しているのかということについては、艦橋は重要施設であり防衛する必要がある事、そして「AUTO」は艦橋に固定されている事から最低限の防衛装備として銃火器ではなく接触でのみ効果を与えるスタンロッドが搭載されていると考えました。しかしこれを「AUTO」は人間に向けて使用してしまいました。この点のみにおいては、「AUTO」は"悪"であるというはっきりとした根拠になります。 ストーリーをそのままなぞれば、人類が「地球」へ戻るために立ちはだかる障害「AUTO」を打倒するという構図ですが、このように対立構造を分析していくと「AUTO」は人間にスタンロッドを向けるまではただ指令に忠実なAI、艦長含む人類及び艦橋系以外のロボットはその命令に逆らう反逆者という構図も見えてきます。 ただしこれらは全て場面とロボットの性能から解釈可能な事であって、作中において断言できる根拠が乏しいためにあくまで私自身の考えと言うに留めておきます。
脚注
*1 :植物→これが初回の植物持ち込みかどうかは断定不可。少なからず探査機「EVE」が植物を持ち帰った際に実行されるプロセスを現行艦長が存じなかった上(「AUTO」にボタンの存在を訪ねている)、ホロディテクターの操作マニュアルは埃を被っていた事から現在の艦長にとっては初回の出来事ではあるが、歴代艦長の元でも同様なプロセスがトリガーされ、しかし既に700年前に命令を受け取っている「AUTO」の指示の元「GO-4」があらゆる植物を最終処分していた可能性も考えられるため。脱出船が使い切りで使用され、使用された脱出船は補完されない事が明示されていればこれが初回という事になるが、それに関連する手がかりは存在しないため脱出船が全て完全な状態で配置されていた事を「初回の脱出船使用」と断定する事はできない。 *2 :BnLから極秘メッセージを受け取り管理したのは「AUTO」のみであるが、植物を必要以上に要求する「AUTO」に対してその行動は何かを隠していると判断した艦長は隠された存在の開示を命令し、「AUTO」は若干程度間を開けたもののそれに従った。このことからBnLという組織としての横断的な権限は「AUTO」の方が艦長よりも高い可能性があるが、艦内では「AUTO」よりも「艦長」の"立場"は高いと読み取る事ができる。
第十章
おわりに
ここまでをお読み頂き、本当にありがとうございました。 私が確信しているのは、本稿に記載している視点はこの作品を捉える上でほんの一部分でしかないという事です。これは私の想像ですが、私が触れたことのない学術分野を修めている人が本作品を見たら、これらとはまた全く違った角度からの視点が浮かび上がって来ることでしょう。 加えて、AIがビッグデータの解析処理という部分から自然言語処理の生成AIへと進化し、更にはAIエージェントとなって自律的に稼働するようになった現代AIの隆盛と社会への急速な浸透を鑑みると、本作品のAIと人間の尊厳、法分野それぞれの接続は、決して物語という範疇に納まるものではなく、AIとの共存を余儀なくされる未来に目を向けた時に"極端な発展を遂げた場合の上質な思考実験"としても非常に価値あるものだと考えています。 是非、あなたが持ち合わせている唯一無二の知識の組み合わせから、独自の視点を見つけてみてください。本稿が視点を変えて本作品に向き合うきっかけとなり、そしてもし何か新しい視点を見つける事ができたのならば、私は本当に嬉しく思います。

巻末資料
作品内時系列順注視ポイント ULTRASTORE 00:03:41 BUY N LARGE GAS 00:03:49 散らかった紙幣 00:03:52 BNL銀行 00:03:54 BUY N LARGE TIMES 00:04:04 BNL TRANSIT 00:04:11 破損したWALLE達 00:04:21 AXIOMが複数隻存在する描写 00:05:07 CEO SHELBY FORTHRIGHT初出 00:05:41 WALLEのベースメント BNLのロゴ付き 00:05:56 WALLEのベースメントはWALLE派遣用の車 WALLE TRANSPORT 00:06:04 地上の消化器もBNL製 00:11:19 EVEのソニックブーム 00:17:02 EVACUATION SALE横断幕(BNLストア内) 00:19:49 液化ガスタンクもBNL製 00:20:24 土木建設もBNL 00:21:14 BNL LINES貨物船 00:21:28(5隻) 特殊なシールド 00:30:13 水は無いが粘土の高い黒い液体の上でボートで漕ぐWALLE 00:30:23 BNL製人工衛星 00:33:35 月面のBNL OUTLETの告知広告 00:34:19 WALLEをトリガーとした命令違反① M・O意思に基づく脱線 00:38:40 アナウンス「BUY N LARGE everything you need to be happy. Your day is very important to us.」 ▶︎本当にそれを理念にしているように感じる 00:40:21 WIN FUN, FUN WINポップアップ 00:40:37 SECURE-T 「Please remain stationary. A service robot will be here to assist you momentarily」 00:40:37 ナニーロボットによる教育「A. It's for AXIOM your home. Sweet home. B for Buy and Large. Your very best friend....」00:41:14 艦橋系ロボットの非言語通信 00:43:54 艦長「Captain B. McCrea」 00:44:17 “Regenerative food buffet” 00:45:30 艦長「FREE Sep tu a ceniennial cupcake in a cup」▶︎紙幣価値がないのに無料という概念は残っている? 00:46:31 艦長「Hey, hey, Auto. What's is that flashing button?」▶︎地球帰還機能を艦長が知らない 00:46:42 艦長「But the no probes ever come back positive before?」 00:47:03 “GLOBAL CEO OF BNL”▶︎世界横断的な企業且つその頭首 00:47:20 CEO 「Now, due to the effects of microgravity, you and your passengers may have suffered some slight born loss.」▶︎超長距離航行する想定がある。その後の肥満状態まで予測済み。 00:48:13 紙媒体の本の開き方を知らない艦長▶︎文化の喪失と共に知的アクセスの手段が限られている事が示唆 00:48:42 本の開き方を知っているAUTO▶︎皮肉なことに人間が存在するにも関わらず機械が文化を保存している00:48:52 艦長「And ah, have wall e cleaned」00:51:07 WALLEが持ち込んだ土の分析と艦長が地球について学ぶ 00:51:20 診断室“DIAGNOSTICS” 00:53:32 「Tell me, AUTO! That's an order」 01:07:49 4秒後 AUTO 「Aye, aye, sir」 BNLのCEOに対して「Mr. President」 01:08:42 2110メッセージ到着 「Green and growing」 01:09:25 艦長の決意「我々は生かされたいんじゃない、生きたいんだ」 01:09:50 赤色トラクタービームを即座に使用して異常に対処する「SECURE-T」 01:16:09 手動で「SECURE-T」を起動するAUTO 01:17:02 AUTOの直接的な人間への危害① ハンドル部分で目を殴る 01:18:50 全員ホバーチェアに乗っている前提の集会 00:19:48 AUTOの直接的な人間への危害② スタンロッド(未遂) 01:22:35 EVEの唄う“It Only Takes A Moment” 01:28:26 競合他社の可能性 FUMAHOL 01:29:55 備考 0:03:59 BNL広告100%REUSED FOOD▶︎食の持続可能性が無限になっていて植物や家畜が不要に?(どちらが先かは不明) 同シーン BNL広告LIQUID AIR/ LIQUID OXYGEN▶︎人類が地球にいる時に植物が無くなっていたため酸素すら商品化

...「映画「WALL-E」から深める知的探究と人生」 by 菅野 璃海 =2026.06.28=
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